8ミリ通信No.4 Essay 8ミリ回帰考
●(活動屋)絹清 昭

 『フィルム上に1秒間15コマ以上で撮影した静止画像を、連続して投影し、動きのある画像として見せるもの』という映画の定義によると、フィルムを媒体とした8ミリはもちろん歴とした映画です。
 
 映画を作る楽しさは大きく分けて4つあると思います。企画(構想)する楽しさ。制作(撮影)する楽しさ。編集する楽しさ。そして、上映(鑑賞)する楽しさです。昔、シングル8が出始めのころ『誰にでも写せます』がキャッチフレーズでした。シングル8は、確かにシャッターを押しさえすればたとえお猿さんにでも写せます。しかし、それで写されたものは単なる素材でしかなく、創作する人の心が無ければ、または意図を持ってまとめ上げたものでなければ映画とは言えません。その意図や心があったかどうかは、自信を持って言えませんが私が8ミリと出会ったのは十七才の時です。友人と8ミリ映画を制作し、高校の文化祭で上映しようと思い立ったのがきっかけでした。当時、名画座に入り浸り年間2百本以上を鑑賞していた映画狂でしたが、自分で映画を作るとなると全てが未知なる世界。三十数年前の出来事で苦心の程は忘れましたが、稚拙ながらフィルム映画第一作の誕生でした。2流作品を酷評していたであろう迷評論家も、自作に関しては3流作品以下だったと思いますが、この時の8ミリとの熱い出会いが活動屋の心の発芽でもありました。
 1秒30フレームであるビデオでは本当の意味で学べないのが映画の世界です。フィルムの一コマ一コマを編集機で覗きながら、1秒24コマのカッティングの技術を8ミリから少しずつ学んだものです。構成・撮影テクニック・ライティング・録音・編集等の技術を身に付けるには、どんな参考書を読むより、実際にフィルムで撮影し、楽しむことから始めるのが一番の方法ではないでしょうか。私が後に職業として映画の仕事に携わることになったのも、8ミリとの出会いが原点だったといえます。

話は一転しますが、この夏ジョージ・ルーカス監督による待望の新作「スターウォーズ/エピソード1ファントム・メナス」が話題となっていますが、スター・ウォーズに関する8ミリに因んだエピソードを一つ紹介します。二十二年前に、シリーズ第1作が公開される前年の話です。読売テレビでSF物が企画され「スター・ウルフ」という題名で円谷プロダクションが制作をを担当したとき、私は制作進行を手掛けました。慌ただしく撮影準備をしていたある日、円谷プロに於いてある試写をするためスタッフ一同に召集がかかりました。詳しい経緯は忘れましたが、プロデューサーの円谷燦氏が、アメリカから「スターウォーズ」の8ミリフィルム(ダイジェスト版)を入手したというのです。その素晴らしいSFXは円谷プロが初めて手掛けた(怪獣の出ない)本格SFテレビ映画を制作する上で大いに参考になったものですが、日本公開前に一早く「スターウォーズ」の映像を身近に観ることができたのは8ミリという媒体があったおかげです。
 あまりにも有名なスペクタクル映画「ベンハー」(1959)の8ミリ版を手に入れ、自宅で上映したときも大感激した記憶があります。13分半に当時7億5千万円の製作費をかけ、映画史上最もスリリングな場面として、メトロポリタン美術館に永久保存されているチュリオットレース(戦車競争)のシーンを、我が家でいつでもフィルムで観れるなんて夢のようではありませんか。映画のディテール、臨場感はやはりフィルムならではのものです。

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絹清さんが制作進行をした「スターウルフ」のレコードジャケット

 でも、8ミリの一番の魅力は何と言っても自分で身近に映画を制作できることではないでしょうか。
私も例に漏れず8ミリで自主映画作りをよく経験しました。小型映画制作グループで、チャップリンの一人五役も顔負けに、制作・脚本・監督・撮影・音楽・編集、そして時々出演も兼ね、貸しホールなどでよく上映したものです。コマ撮りのアニメづくりも楽しいものでした。当時の拙い作品を今は逆にテレシネの技術のおかげで、好きなときに観ることができるのも嬉しい時代となりました。苦心のオーバーラップ、クレーン効果の工夫、スプライシングテープの継ぎはぎだらけのフラッシュバック・・・etc、技術は未熟そのものながら、活動屋精神溢れる若き情熱が焼き付けられた映像は懐かしい限りです。
 後に職業として関わったテレビ映画(16ミリ)CFや本篇(35ミリ)の制作の基礎は、やはり8ミリだったのです。むしろ撮影後の現像段階において特殊なオプチカル処理が出来るネガフィルムより、現像前、撮影時に全て計算処理しなければならない8ミリの緊張感には創意をそそられ、ドキドキしたものでした。
 最近のことですが、アンティークショーで(3本ターレット)ダブル方式の8ミリカメラを見付け、レトロなデザインに惹かれ購入しました。聞けば当時の名機だったそうです。とても手入れが行き届いており、支障もなく作動もし、愛機として大切にしていた人の温もりが感じられます。昭和初期の風景や家族のスケッチを暖かく見つめたであろうファインダーを覗くと、愛用していた人の心に思いが馳せます。

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アンティークショーで手に入れた8ミリカメラ

 私は今、映画上映の施設がある文化ホールで仕事をしていますが、青少年を対象とした恒例の映画会を企画しています。無限の可能性を秘めた映像世代の子どもたちが、優れた映画を鑑賞する機会を増やすことによって、将来日本を代表する映画作家に一人でも育つことを期待したいものです。
 最近は子どもを対象としたビデオ作品の制作講座や、ビデオソフトを利用して映画会と称した上映会も増えてきましたが、今後はフィルム映像による映画づくりの体験入門として、できるだけ多くの青少年に、8ミリと出会う機会を与えられないものか模索して行きたいと思っています。
 8ミリこそ『映画制作の基礎を最も身近に学べる』有り難い世界なのですから。

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   絹清 昭
(きぬせ あきら)
1950年青森県生まれ。
日本映画テレビ技術協会会員。
日本アカデミー賞協会会員。
現在、京都こども文化会館(エンゼルハウス)勤務。

                          8ミリ通信No.4 page,5~6



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2008-12-24 17:30 | Essay/絹清 昭 | Comment(0) | Trackback(1)
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  • 2008/12/24(水) 17:27:03 |
  • 8ミリ通信                       ~GOOD HILL FILMS FACTORY MAGAZINE~ 復刻版
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