8ミリ通信No.10 小説の中に生きる八ミリ
小説の中に生きる八ミリ
香気あふれる文芸ミステリ

 「黒くて角ばった機械だ。角や縁がすこしばかり剥げているが、さほどの傷みはなさそうだ。
投影レンズの筒が、控えめに、ひっそりと出ている。コダスコープ、という英文字の刻印が読みとれた。
 老婦人は眼鏡をかけてリールを取りつけ、八ミリの、か細いフィルムを映写機に通し、コンセントを差し込み、壁掛けスクリーンを欄間の鉤にひっかけて襖の前に吊した。

《中略》

 つまり女学校時代の藍子叔母が映っていた古い八ミリ・フィルム。もしもあの話をわたしが口にしていなければ、美那のほうも、遠いむかしの目撃談を披露におよぶこともなかっただろう。」

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 作家 多島斗志之さんの新作ミステリ小説「汚名」の一部である。いまは亡き叔母の過去を追う主人公は、叔母の旧友という老夫婦から、古ぼけた八ミリフィルムを見せられた。その中に写し撮られていたのは、初々しく、朗らかで、健康的な美しさを持つ、叔母の姿であった。
いったい何が叔母を変えたのか。
次々と明かされていく意外な真実。それは・・・。

 作家の多島さんが当工場を訪れてくれたのは今から一年半ほど前のことでした。戦前の8ミリフィルムや映写機について調べたいというので、昭和初期の資料やダブルエイトのフィルムを前にして数時間お話をさせて頂きました。小説を書く上で、歴史的事実から題材を求めるとその裏付けのためには緻密なことがたくさん必要なのだということが解りました。フィルムの種類、映写機の名称、コマ速度や操作方法など、そのどれかが間違っていても真実味が薄らぎ小説全体に影響を及ぼすように感じました。是非、読んでみて下さい。あなたにとって新しい8ミリの世界が開かれるかもしれません。

「汚名」 (初出誌は『小説新潮』2001年7月〜2002年7月号)
著 者:多島 斗志之
発 行:2003年1月20日 新潮社(発売は1月22日)
定 価:1,600円(税別)

■多島 斗志之(たじま としゆき)
1948年大阪生まれ
1982年、小説現代新人賞を受賞し作家デビュー。
主な作品に『症例A』『クリスマス黙示録』『仏蘭西シネマ』など。


8ミリ通信No.10 page,02
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2010-12-24 17:00 | 小説の中に生きる八ミリ | Comment(0) | Trackback(0)
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