〜映画の舞台、西陣〜 景気の低迷で機織る音が少なくなったとは云え、
西陣の町を歩くとまだまだ路地の奥からハタ音が聞こえ、華やかなりし頃を偲ばせてくれる。
テレシネ工場にもその音が響き、時には映写機の回る音とハーモニーを奏でる。そんな
西陣の栄枯盛衰は多くの映画人の心を捉え、フィルムが作られた。
「
西陣の姉妹」(大映京都・一九五二年作品)は惜しくも昨年他界した名匠・
吉村公三郎が監督、脚本は
新藤兼人である。
女性を主人公とした映画を得意とする監督は没落していく
西陣の織元を舞台に美しい三姉妹の生き方を描いている。
現在の五番町あたり 「
西陣心中」(ATG 一九七七年作品)は西陣の帯屋を生家とし、アマチュア
8ミリ作家から商業監督になった高林陽一が監督・撮影した。西陣の織屋に住み込む主人公のゆみと恋仲の織職人の心中を描く。西陣織りの綴れ帯をふたりの死装束として表現したこともここの生まれの監督ならではである。
「五番町夕霧楼」(東映・一九六三年、松竹・一九八〇年)は、水上勉の小説を映画化した。西陣のはずれにある遊郭に生きる夕子と修行僧の愛を描いたものである。
郭は一番町から六番町まであり、当時はおよそ二百軒からなる家々は軒並み妓楼だったとか。今でもその面影をしのばせる建物が随所に残っている。
8ミリ通信No.8 page,4